モリブロ

ここ最近はよく悩んでいる。

川04

 私も、隣にいるあなたも、不器用な気がした。決して見栄えのいい顔とも言えないし、人様の前に立てるプロポーションでもない。かといって違う生物かと言われるとそこまで大げさな話じゃない。もし宇宙人が地球に来て、私と吉澤亮が同じクリーチャーかと問われたのなら、ギリギリ同じ種で、それでいて実はそこまでの大差がないように思えると思う。カブトムシの雄雌の優劣が私にはわからないように、生を実感するようなスケールで見れば、そんなことは小さな差なのかもしれない。

 私たちは一人と一人ではなく、もう混ざり合っていた気がする。自分より自分が良く見える。私たちは自分の外見が気になるから、互いに粗が出ていないか定期的にチェックしあう。おしゃれを気にしすぎて浮いてないか、喋り方は早口すぎてオタクのように聞こえないか、相槌のバリエーションが一辺倒で相手につまらないことがさとられていないか、ぼーっとしているでも顔に覇気があるか。自分で自分を見るという変な色眼鏡がかかっていない分、鏡よりも自分を映し出すような気がしていた。気の使い方も、人見知りなことも妬み嫉みが多いことも、似ていると思ったから、なおさらだった。

 私は臆病だし、あなたも臆病だと思う。しかも、やっぱりそれは惨めだと思う。自分で自分をわからないから、もう一人の自分を作っているだけなんだと思う。互いを尊重するでもなく、私はどこにも異常がないということで安心するというただそれだけで、自分が勘違いをしていないのか、恥ずかしい目にあっていないのか、俗にいう痛いことをしていないのか、それらを確認してはそれに安堵するということは、目の前にいる人を度外視していることと同じなんじゃないのかと思う。

 でもやっぱり怖い。何か間違っていないか、自分がやっていることが正しいことなのか一切の見当がつかない。誰かにとってはありがたく心地よいことでも、誰かにとっては不愉快だったりする。自分と全く違う誰かが私を肯定してくれることを常々感じては、それでは相手のいる意味など無いと全く逆の返答が底のほうから反響してくるのを聞いて、ぼーっと穴の中を見ていると今は夕方。最近は徐々に気温も下がっている。誰も私には興味ないようなそぶりでバス停を過ぎるから、いたずらしたくもなるけれど、荒んだ頭の中からは思考が出ていこうとしない。Suicaのチャージをして、東扇島からくる川04系統を待っている。なかなか来ない。乗ってしまえば、足るに足らないこととも思う。