モリブロ

ここ最近はよく悩んでいる。

入学おめでとう

 私は仕事ができないんじゃないかと思う。私は学校の成績は良かったが、それは仕事に全く影響を及ぼさないのではないかと思う。私は今何を誇りに生きているのだろうと思う。私は世の中が単純じゃないと思う。私はやはり仕事ができないんじゃないかと思う。

 私は時間の管理ができない。私はタスクの管理ができない。私は身の回りの支度ができない。私はお酒が飲めない。私は休日に外に出ることができない。私は友達が少ない。また、私は飲食店に入るのが怖い。私は目上の人に詰められるのが怖い。私は自分の実力が大したものでないことが怖い。私は変な格好をしている風にみられるのが怖い。私は人に嫌われるのが怖い。

 私には怖いものだらけの生活を歩んでいると思う。とるに足らないものを怖いと感じているのも情けない話だと思う。私は自分が大げさではないと思っている。私と同じような恐怖を感じている人は多くいるはずだ。その人たちはきっと、私と同じように恐怖しているか、あるいは恐怖を取り除くために物事のとらえ方を変化させて順応しているのだと思う。

 それらはどこまで突き詰めていっても、根源的な恐怖のように感じられる。

 私のそれは、死ぬ直前まで続くのだろうか。あと数分で人生が終わるというようなときでさえ、私は怖いものにおびえ続けて生きるのだろうか。そうして、恐怖のない生活を目指していった先にある空虚な環境に備え付けられた薄い布団の上で生涯を終えるのだろうか。

 ところで、小学校に入学した甥、入学おめでとう。私は学校に在籍しているほとんどの期間を自尊心を保つことに注力していたが、きっと君はそうもいかない。私は挫折という挫折を避けて学校に通っていたが、きっと君はそうもいかない。私の家庭環境はほとんど周りのものと同等と思っていたが、きっと君はそうもいかない。

 君は私が触れなかった恐怖の実態に触れることになる。いま私はそれがうらやましく思う。

 私は仕事ができないんじゃないかと思う。私は学校の成績は良かったが、それは仕事に全く影響を及ぼさないのではないかと思う。私は今何を誇りに生きているのだろうと思う。私は世の中が単純じゃないと思う。私は嫌なものから目をそらしてきたから、ひどく臆病なんじゃないかと思う。