モリブロ

ここ最近はよく悩んでいる。

先天的ずぼら

 丁寧な暮らしができている友達は、いつもドライヤーのコンセントを抜いている。毎朝髪をセットして昼に歯磨きをして夜にはスキンケアをする。休日は床を掃除してシャツにアイロンをかけて布団を天日に晒す。

 昨日は彼と駅のほうに出向いて遊んだけれど、トイレから出てくるときにハンカチで手を拭いてきた。家の引き出しの肥やしとなっているハンカチのストックのことを思い出しながら、私はスカートの裾に手を擦った。グラスについた水滴をお絞りでふき取ってはきれいに折りたたみ机の端っこに置く。彼の一挙手一投足に尊敬の念を覚えるけれど、彼と自分には埋まることの無い先天的な差があるように感じた。一般人とヴィーガン、営業マンとエンジニア、トカゲとイモリ、川崎と蒲田、羽田空港と成田空港、同一になることのない2種の組み合わせに私たちは当てはまる気がした。

 人間として全うなのは確かに彼なのだが、お行儀のよい人間はどの時代にも全うなのだろうか。浮気をしてたくさんの遺伝子を残していたかつての人間はきっと優秀だったのに、いまじゃ非難の的なわけで、きっと私のようにずぼらな人間が評価された時代もあったのではないかと思う。私のようなずぼらな遺伝子はこの時代まで受け継がれているわけで、きっと生存に都合がよいことがあったんだろうし…。いつかどこかの偉い大学教授がこの形質を持った遺伝子のフラグメントを見つけてくれて、ZBR1遺伝子とか名前を付けてくれるかもしれないし、もろもろを考えるとやっぱり光栄だったんじゃないかと思ったりもする。

 そんな適当なことを思っていると一日が終わっているので、今日も水垢で瞬時に曇る鑑を見ながらクレンジングを塗りたくる。