モリブロ

ここ最近はよく悩んでいる。

変性

 DVなんて、テレビや異常者の話なんだろうと思っていて、自分が考えることではないと思っていた。でも、なんでこうなっているんだろう。息が上がっているし感情の高ぶりが止まる感じがしない。自分の感覚が頭に集中していてかみ合わせの悪い歯に力がかかっていることがわかる。目の前には泣いてうずくまっている女がいるけど、さっき多少打って、でも別に体には問題ない、はず。こんな状況異常だということはわかっているけど、それが当たり前の状況になっていて、それもやっぱりおかしいと思った。昔は勉強が得意でテストでは高得点が当たり前だったのに、大学生になると数単位しか取れずに中退してしまった。感覚のハードルが下がって、それが普通になるまで、それは自分の心の筋肉を弛緩させるような感覚で、上げるよりは簡単だって知っていた。それでも、やっぱりどこか同世代のなかでは真ん中より上にいるような気がしていた。そもそも偏差値の高い大学に行って、彼女もいてとっくに童貞でもないし、底辺にいるような感じじゃなかった。でも、やっぱり今はどうなんだろう。歯を噛みしめすぎて血の味がするし、ヒステリックを起こした女に慣れたし、感情的になると暴力の衝動は止まらない。人間としてダメな次元にまで来てしまっているのだろうけど、それでもまだ、人間のなかじゃマシなほうだと思う。ギャンブルも酒もやらないし、借金とかは特にない。乗り越えるべきタスクはたくさんあるが、大体、どんな人間も治療しなければいけない病気や悩み事、解決する目途の経たない宿題を抱えているのだから、こんなのはどうってことない。

 そんなことを考えているとだんだん冷静になってきたので、女に謝って、煙草を吸いに外にでた。なぜか小学生だった自分を思い出す。一人ぼっちの自分は立ったまま玄関ですすり泣いていた。どこで間違ったのか、自分も泣きそうになった。しばらく考えて、どこから間違ったのか考えたけれど、それがわかったところでもうどうにもならないのだと思った。家の前を通る、誰一人乗っていない貨物列車のスピードは普通の電車より早く感じた。部屋着では夜の寒さに耐えがたい、そろそろ家に入ろう。